社会福祉法人紫水会
公開日:2026-05-07
1,900名を超える大規模な福祉組織において、障害のある方がいかにして「現場の戦力」として溶け込んでいくか、その理想的なプロセスを示しています。「体力的・精神的な負担をどう調整するか」という企業側の懸念を、職場実習という「事前の対話」によって解決した、三者の歩みをご紹介します。
事例のポイント:
•「担当者」を固定する安心感: 実習担当者を決めることで、指示系統の混乱と実習生の不安を解消。
•「短時間から」の段階的導入: 本人の体力的な限界を実習で見極め、無理のないスタートラインを設定。
• 支援機関による「報連相」の徹底: 現場の負担を減らすため、事前の報告・連絡・相談スキルを磨き上げてから送り出す。
企業概要
企業名:社会福祉法人紫水会
所在地:名古屋市北区名城三丁目2番12号
社員数:1,972名
業種:福祉事業
事業内容:福祉施設(高齢者・障がい者・児童)の運営
企業HP:https://www.shisuikai.or.jp/
障害者雇用:65名/種別:身体、精神、知的障害
支援体制:実習時の担当職員にて業務内容を指示、フォロー
「大規模組織だからこそ」の丁寧な準備
名古屋市で高齢者・障がい者・児童福祉施設を幅広く運営する社会福祉法人紫水会。すでに65名もの障害者雇用実績を持つ同法人でも、新しい仲間を迎える際には常に「その方に無理のない業務をどう切り出すか」という課題に向き合っています。
今回、介護補助や清掃業務での採用にあたり、最大の懸念は「体力的・精神的な負担が過度にならないか」という点でした。福祉の現場は多忙であり、本人が無理をして倒れてしまわないか、現場のコミュニケーションが負担にならないか。その懸念を解消するために選ばれたのが、本採用前の「職場実習」でした。
支援機関と共に行う「環境の先行整備」
この実習を影で支えたのが、支援機関による緻密な事前トレーニングです。実習生として参加したAさんは、統合失調症による「疲れやすさ」や「対人関係への不安」を抱えていました。支援機関は、実習に向けた「プレ訓練」として、訓練施設内の机やパソコンなど備品の清掃に毎日取り組み、さらに、不明点があればその日のうちにスタッフへ相談するよう、具体的なコミュニケーションの予習を重ねました。
企業側もこれに応え、実習前にご本人の特性を「実習担当職員」へ共有。担当者を固定することで、実習生が「誰に聞けばいいか迷う」というストレスを排除しました。この「情報の事前共有」と「担当者の固定」という環境整備が、現場に大きな安心感をもたらしました。
実習時と就労後の業務内容
《介護補助》
シーツ交換やシーツやタオル等の洗濯、慣れてきたら実際に利用者さんとお話をしていただいたりと、介護スタッフの補助業務全般をお任せします。
《施設内清掃》
施設内(居室・廊下・浴室・トイレ等)の清掃業務をお任せします。
《業務士》
施設内備品(車いす等)のメンテナンス等の業務をお任せします。
実習時と就労後の1日のスケジュール
9:00 出勤~業務開始
【休憩60分】
16:00 業務終了~退社
実習で見えた「現実」と、それを包み込む「提案」
5日間の実習は、本人にとっても「自分を知る」ための貴重な時間となりました。実際に動いてみることで、自分が想像していた以上に体力が必要であることを実感。しかし、同時に福祉の現場にふさわしい言葉遣いや態度を学び、人間関係への不安も除かれ、「ここで必要不可欠な人員になりたい」という強い意欲が芽生えました。
企業側も、実習中の動きを見て「短時間勤務から始めて少しずつ慣らしていけばいい」と提案。この柔軟な声がけが、新しい環境に対して強い不安を持っていたご本人の背中を押し、確信を持った応募へと繋がりました。現在は介護補助から清掃、車椅子のメンテナンスまで、幅広い業務を担う頼もしい存在となっています。
実習担当者を決めることが、成功への第一歩
社会福祉法人紫水会の担当者は、実習を検討する企業へこうアドバイスします。
「不安なこともあるかと思いますが、ご本人は自分の特性をよく理解されています。実習前の面談で本音で話し合うことが、スムーズな導入の鍵です。そして何より、現場に『誰に聞けばいいか』を明確にする実習担当者を置くことをお勧めします」
支援機関による専門的な「通訳」と、企業側の「段階的な受け入れ」。この両輪が職場実習という場で噛み合ったとき、障害者雇用は「不安な挑戦」から「組織を強くする確かな力」へと変わります。