障害者の雇用・就労事例紹介

障害者を戦力として人材活用している企業の雇用事例や実習受け入れ事例をご紹介します。

ユタコロジー株式会社

公開日:2026-04-28

障害者雇用を検討する際、特に「新しい職種への挑戦」や「目に見えにくい精神障害のある方の受け入れ」において、多くの採用担当者が「自社の体制で本当に大丈夫だろうか」という不安を抱えます。その不安を解消し、互いに納得感を持ってスタートを切るための鍵が「職場実習」にあります。これまで清掃などの現場職を中心に障害者雇用を行ってきたユタコロジー株式会社では、今回、初めて「本社勤務の広報スタッフ」というポジションでの受け入れを計画しました。

事例のポイント:
•未知の職域への挑戦: 清掃から事務・広報へ、実習を挟むことで職域を拡大。
•業務の最適化: 「1日の適正な業務量」を実習中に見極め。
•第三者の視点: 支援機関を交えた本音の対話で、配慮のミスマッチを防止。

企業概要

企業名:ユタコロジー株式会社
所在地:名古屋市昭和区広路本町4丁目48番地
社員数:384名(パート・アルバイト含む)
業種:その他サービス業
事業内容:ビル環境事業(総合ビルメンテナンス)、Well-Being事業
企業HP:https://yutacology.co.jp/
障害者雇用:3名(2.5P)/種別:精神障害
支援体制:月1回の定期面談、体調に応じた業務内容・業務量の細やかな調整

現場職から「本社広報」への新たな挑戦

これまで、お客様先での清掃業務を中心に障害者雇用を進めてきたユタコロジー株式会社。今回、初となる「本社勤務」での採用を計画しました。担当したのはWebサイトやSNSの運用といった広報関連のポジションです。現場での雇用経験は豊富でも、オフィスワーク、さらに広報というクリエイティブな職種での受け入れは未知の領域。社内のフォロー体制が機能するのか、業務量は適切なのか。担当者は「どのように進めるべきか」と頭を悩ませていました。

「双方のテスト期間」としての実習という選択
最大の懸念は、既存社員とのコミュニケーションや、広報の業務内容や業務量が本人にフィットするかどうかという点でした。思案の末、支援機関や当窓口のアドバイスを受け、採用の合否を即座に決めるのではなく、まずは「お互いのためのテスト期間」として「職場実習」の導入を決定しました。

実習時と就労後の業務内容と1日のスケジュール
総務庶務、WEBサイト&SNSへの記事アップロード作業、自社Youtubeチャンネルにアップする動画撮影&編集等(就労後も同様)
実習時:12:50頃出社 13:00勤務開始 16:00終業(就労後も同様)

実習で見えた「合理的配慮」の具体策
数日間の実習は、企業側の不安を具体的な「改善点」へと変えていきました。実際に業務を依頼してみることで、以下の2点が明確になったのです。
•配慮の「ちょうど良い塩梅」の確認: 職場として整えるべき環境や、声かけのタイミングなど、精神障害のある方への具体的な合理的配慮を実体験として確認できました。
•過度なストレスの回避と業務設計: どの業務が本人にとって強い負担になるのかを把握できたことで、本採用に向けて無理のない「1日分の業務パッケージ」を組むことが可能になりました。

【実習生インタビュー】 「働きたい」という願いを阻んでいた、目に見えない壁

実習前、Aさんは大きな葛藤の中にいました。うつ病を抱える中で、「仕事」という言葉に対する心理的ハードルは非常に高く、特に「フルタイムで働けるのか」という不安が常に心に影を落としていました。 

ご自身の中で予定を習慣化させることが難しく、数日前から「もし当日動けなくなったら……」という脳内シミュレーションが止まりません。その緊張が睡眠リズムを狂わせ、中途覚醒や不眠を引き起こし、結果として当日の体調を悪化させるという悪循環に苦しんでいました。実習を前にして最も不安だったのは、「当日に十分な睡眠が取れるか」、そして初めて挑戦するSNSやホームページ更新という業務で「どの程度のクオリティを求められるのか」という点でした。 
しかし、3日間の実習はその不安を鮮やかに塗り替えました。実際に職場の空気に触れ、業務を体験することで、彼女は自分らしく働くための「正解」を自ら見つけ出したのです。
•コンディションを保つ時間設定: 午後からの業務であれば、睡眠不足の影響を最小限に抑え、良好なコンディションで仕事に臨めると確信できました。 
•「自由度」という名の安心感: マニュアルを習得した後は、自分の進めやすい優先順位で取り組める環境が、心理的な余裕を生みました。 
•相談できる文化: 体調不良の際も無理に出勤を強いるのではなく、気軽に相談・配慮してもらえる環境であることを知り、「ここなら無理なく続けられる」という安心感を得ることができました。 

【支援機関インタビュー】 プロの視点が創り出す、ミスマッチのない「ソフトランディング」

支援機関は、実習を単なる「体験」ではなく、採用後の安定稼働を見据えた重要な「シミュレーション」と位置づけています。実習に向けては、単にスキルを確認するだけでなく、本人の体調管理支援や実習時の心構え、日報の書き方に至るまで、丁寧な事前準備を行いました。支援者が考える実習の最大の意義は、以下の3点に集約されます。 
•能力の可視化: 実際の業務を通じて、本人の適性やスキルを正確に把握できること。 
•相性の確認: 職場の雰囲気や、共に働く社員との人間関係の相性を事前に判断できること。 
•スタートダッシュの支援: 不安要素を実習で解消しておくことで、入社後の人間関係や業務への戸惑いを最小限に抑え、スムーズにスキル習得に集中できる環境を整えること。 

「本音の確認」が、双方にとって良い職場を作る

今回のケースでは、本人の体調に配慮し、実際の就業を想定した時間帯で実習を設定したことで、通勤を含めた完璧なシミュレーションが実現し、就労につながった現在は、動画制作やSNS発信を主軸に、「より分かりやすく、トレンドを捉えた発信をしたい」と、未来を見据えた目標を持って意欲的に業務に取り組んでいます。 

実習を終えた担当者は、これから検討を始める企業に対し、次のようにアドバイスしています。
「特に精神障害の方の場合、企業側がどこまで配慮すべきか判断しづらい部分があります。だからこそ、実習を通じて支援機関も交え、就業の障壁となる事柄を『本音』で確認することをお勧めします」
実習は、単なる見学ではありません。会社と働く人、双方が納得してスタートを切るための不可欠なインフラなのです。

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